詩吟ユニットxièのニューアルバム「いろごろも」が完成!
今までに制作した音源をこのアルバムにまとめました。
前作のEP「をかし」との大きな違いは、尺八の生演奏が録音されている事です。
今回のアルバムには、2013年よりxièのライブでサポートして下さっている尺八演奏家の田野村 聡さんに参加して頂きました!
私は、コンピューター(DAW)で音楽を創るので、どうしても人間臭さの足りないサウンドになってしまいます。一音一音キレイな音ばかりだと、キレイすぎて不自然に聞こえてしまいます。整いすぎていると面白さに欠けてしまうのです。
詩吟の歌声には、息づかいや音程(ピッチベンド)、ビブラート等々、不安定な要素がたくさんあり、その生々しさ(ゆらぎ)が心地よさを感じさせてくれます。
尺八の録音は、即興演奏!
田野村さんには、ライブでもレコーディングでも即興演奏をして頂いています。もちろん、譜面を用意して、その通りに演奏して頂くことも可能です。しかし、私の感覚にはない音やフレーズが入る事によって、深みのある音楽になると感じています。生演奏の不安定要素は、たくさんありDAWのサウンドに『ゆらぎ』を与えてくれ、より心地よく聞ける音楽になったと思います。
ジャンル:詩吟、モダントラディショナル
リリース:2023年5月1日
アーティスト:xiè(シエ)
音楽配信サイト一覧(Music Site List)
Spotify, YouTube, LINE, amazon, mora, レコチョク etc
1〜4曲目は、四季がテーマ
- 敷島の 大和心を 人問はば 朝日に匂ふ 山桜花
- 空はれて 梢色こき月の夜の 風におどろく 蝉のひと声
- 山行
- 寒梅
- 婆娑羅(ばさら)
- 祈り
- みだれ髪
- 山行同志に示す
- 黒田節 詩吟「名槍日本号」
- 月の沙漠
- 西南の役陣中の作
1. 山桜に感動する日本の心
桜の花は、短期間に勢いよく咲き、見事に散っていきます。
散り際までもが、美しい!1年間であの数週間だけ美しく咲く桜。とてもダイナミックな花だと思っています。その桜の美しさとダイナミックさの両方を目指しました。
ストリングスの音色で桜の美しさ、後半から鳴るリズムでは、一気に咲く力強さを表現しました。
2. 暑い夏のワンシーン
お月様がキレイな夜空、風に揺られた枝に驚いた蝉。
なんとも夏らしい素敵な詩ですね。リアルに蝉の鳴き声をSEに使いました。ズルい演出かもしれません。Bell系の音色は、風鈴のイメージ。間奏のピアノは、キレイなお月様をイメージしました。
3. 山に咲く夕暮れの美しい紅葉
イントロの西洋的なコーラスフレーズは、『山彦』をイメージ。
山彦(やまびこ)は、日本の妖怪。各地に伝わるが、多くは山の神やその眷属の性格を持っている[1]。
山や谷の斜面に向かって音を発したとき、それが反響して遅れて返って来る現象を、山彦が応えた声、あるいは山彦が引き起こした現象[2]と考え「山彦」と呼ぶ。また、樹木の霊「木霊(木魂)」が応えた声と考え「木霊(こだま)」とも呼ぶ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%BD%A6
もしも『山彦』がいたら!?こんな雰囲気の反響音が似合いそうだなぁ。。という遊び心からコーラスの音色を選びました。間奏では、尺八が動揺「紅葉」のフレーズから尺八ソロへ展開しています。尺八ソロの後は、紅葉の葉で紅く染まった大きな山々をイメージして大きな雰囲気のリズムが曲を盛り上げます。
4. 風や雪の中に咲く一輪の梅を冷たいサウンドで演出
銀世界をイメージしたサウンド。
ピー、ピーと無機質に鳴るシンセサウンドは、温かみがなく(人間味のない)冷たさを演出するには、良い音色だと思います。サウンド全体も、なるべく高音域にして温かみのない雰囲気にしました。
5. 詩吟ユニットなのに詩吟がないインスト曲
ユニット名のxiè(シエ)は、中国に伝わる想像上の生き物『獬豸(xièzhì)』(かいち)から名付けました。その『獬豸』をイメージして婆娑羅のサウンドを創りました。イントロの鼓動音は、生き物と想定してのSEです。
獬豸(かいち、中国語: 獬豸; 拼音: xièzhì シエジー、獬廌)は、中国の伝説上の動物である。日本の狛犬の起源ともされる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8D%AC%E8%B1%B8
日本では神羊という呼び名も存在する[4]。日光東照宮では、麒麟・白澤と共に拝殿杉戸に装飾が施されている。
婆娑羅とは、
語源は、梵語(サンスクリット語)で「vajra (伐折羅、バジャラ)= 金剛石(ダイヤモンド)」を意味する。平安時代には雅楽・舞楽の分野で、伝統的な奏法を打ち破る自由な演奏を婆娑羅と称するようになった。これは「ダイヤモンドのような硬さで常識を打ち破る」というイメージが仮託されたものである。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%B0%E3%81%95%E3%82%89
6. 祈る気持ちで創りました
東日本大震災の後、少しでも未来が良くなって欲しいという『祈り』を込めてサウンドを創りました。西洋的なコーラスは、まさに『祈り』をイメージした音色。そのサウンドに恵聖が詩を書き歌いました。後半は、辛くても、力強く乗り越えて欲しいという気持ちで少し力強いリズムを入れました!
7. 重く不安定なサウンドを目指しました
「みだれ髪」は、詩の内容から重たい雰囲気を出したいと考え、この曲だけ他の詩吟よりも半音低く吟じられています。サウンド全体も、少し重くしています。低音に響くHit系の音色は、アタック感(派手さ)がなく、さらに重心を重くしています。
エスニックな笛は、不安定に揺れた音色。人の気持ちが不安定に揺れ動くとこのような音色になるのでは?
与謝野晶子の『みだれ髪』は、後に夫となる歌人・与謝野鉄幹との恋愛をメインのテーマとして描いた歌集である。刊行は1901年。女性による歌集が単行本として刊行されたのは日本初とされる。
同書は、399首の歌が内容ごとに6章に分けられている。それを制作年代順に並べ直して解説した『新みだれ髪全釈』内で、著者の逸見久美氏は、「初期の歌はわかりやすいが後半期になって難解なものが多くなる」と指摘している。その理由を「これは恐らく鉄幹との恋愛が進行し、単純ではあり得なくなった晶子の内面を無理に詠んだためだ」と述べている。
与謝野晶子の歌は、情愛の複雑な変化を丁寧に捉えている。また、性を生々しくイメージさせる作品でもある。
https://diamond.jp/articles/-/264054
8. アルバムの中で最も都会的なサウンド
一歩一歩コツコツと登る山の様子を淡々としたサウンドで表現しました。
都会的なリズムの音色にのる尺八の音色もまた都会的な雰囲気の演奏です。まるでソプラノサックスのような高音域の音色!この尺八のOKテイクを録り終えた瞬間「よかった!」と田野村さんと目を見合わせて言ったのを覚えています。
9. 酔っ払いが歌っている?
この曲の歌をレコーディングする時、恵聖さんから提案がありました。なんとも面白い提案で、思わず笑っちゃいましたね。
その時の会話です。
恵聖「Hagiさん、酔っ払いの雰囲気で歌いましょうか?」
Hagi「えっ?そんな歌い方あるんですか?」
恵聖「ありますよ!」
Hagi「酒は呑め呑め♪ですからね、酔っ払いましょう!」
Hagi「あ、でも酔っ払いバージョンとノーマルバージョン、両方から選ばせてください」
恵聖「了解です、では酔っ払いから歌いまーす」
選んだテイクは、酔っ払いバージョン!
歌のリズムは、まるで酔っ払いの千鳥足のように突っ込んだり、もたったり。。巻き舌にもなったり、お酒も飲まずに酔っ払いの雰囲気で歌った恵聖の黒田節!
10. 悲しい響きの民族楽器が雰囲気をつくる
「世界で一番悲しい響き」と言われるDudukの音色は、短調の詩吟と相性がピッタリ!
アブダビで開催されたイベントに参加した時、せっかくならアブダビをイメージできる曲を創りたいと思い制作しました。砂漠やラクダのイメージから「月の砂漠」をモチーフにした漢詩を吟じています。
ドゥドゥクだけではなくカーヌーンやパーカッションの音色もエスニックな雰囲気を演出しています。さりげなく聞こえるドゥドゥクではない笛の音色もやはり悲しげな響き。
11. 戦を勇ましく表現
嵐の前の静けさ、そんな雰囲気のイントロで始まります。まるで映画のワンシーンに使われそうな映像的なサウンドは、尺八が入ると徐々に激しくなり詩吟が始まると同時に戦のサウンドになります。
無茶振りした尺八録音
尺八の録音時には、田野村さんに「常軌を逸した雰囲気でお願いします」と無茶振りしたのを覚えています。戦に挑む前の武士は、常軌を逸した気持ちになっているに違いないと思ったからです。見事にその雰囲気を表現した尺八の音色にも耳を傾けて下さい!
https://www.weblio.jp/content/%E3%81%84%E3%82%8D%E3%81%94%E3%82%8D%E3%82%82