*マスタリングのノウハウ記事ではありません
DAWで音楽を作っているので打ち込みの段階である程度のミックスも行い、最後まで自身でミックス〜マスタリングまで行う時もあれば、エンジニアさんに依頼する場合もあります。
EP【狐火】とAlbum【いろごろも】では、曲作りとミックスまで自分で行いましたが、最終仕上げのマスタリングは、Alchemy Studioに依頼しました。(チーフエンジニア:北畑 俊明)

他人の感覚が作品に深みを与える?
最終仕上げまで自身で作業を行うことも可能です。しかし自分にはない感覚を持ったミュージシャンやエンジニアが参加すると予想外のサウンドになったり、その作品の新たな可能性に気づける時もあります!これは、曲の制作段階でも、ミックスやマスタリングでも、どの段階でも他人の感性が加わる事は、とても刺激的で楽しいです!
(ディレクション能力がないと求めていない方向へ変化してしまう可能性もあるけど)
依頼時のリクエスト
みなさんどのような注文をつけられるのか知りませんが、私の場合は下記のイメージをお伝えしました。(リファレンス音源も渡していたと思います)
- 低音域も高音域も気持ちよく伸びて欲しい。
- 音圧は、あまり必要ない。
- ワイドに大きな感じ。
- 奥行きも、感じられるような音楽にしたい。(伝えていなかったかも?)
ここから作業の始まりです!
*今回のマスタリングは、メールと音声ファイルのやり取りのみで進めました。
HagiがMixした刀屋壱の音源
check1の音源で方向性の確認
作業を進めていく上で、まずは2種類の音源が送られてきました。
check1を聴いた後の北畑氏とのやり取り
【狐火】M1_Master_check1を聴いた後の修正リクエスト
- もう少し低音域を出したい
- もう少し音量を下げたい
【狐火】M2_Master_check1を聴いた後の修正リクエスト
- M1に比べると音量が少し足りないと感じました。
- コンプ感が、M1よりも強く感じました。(自分のMixのせいだと思います)
- 音の広がり(特に低音域)がセンターに寄っていると感じました。
低音域は、ワイドに広がって聞こえるよりも、センター寄りでドシッと鳴るような方向で音作りをしてくれたのだと理解しました。でも、低音域の広がりは、曲の制作時に自分なりに調整しているので、M1のように左右に広がっている雰囲気を残したままでお願いします。
北畑氏からのメッセージ
- 質感的なところは大丈夫ですか?
- 打楽器系のアタック音が少し鋭く感じたのでアナログの機材を使用しました。
- もし、元の感じが良ければアナログ感も修正します。
アナログ感は、すごく気に入っていました。
自分の制作環境は、アナログ機材がひとつもありません。
全てデジタル処理なので、アナログ機材を通るだけで艶が出るように聴こえます。
(例えるなら、木材にニスを塗ったような感じでしょうか?)
また、コンプ感があまり出なくてもファットな雰囲気になり豊かに聴こえます。


後に、スタジオを訪問した時、どの機材をどういう順番で使用されたか教えて頂きましたが、メモらなかったので忘れてしまいました。
(アシスタントさんの細かなメモは、さすがでした!)

さらに修正されたcheck2音源
【狐火】M1_Master_check2を聴いた後の最後の修正リクエスト
・低音域と音量は、そのままで高音域だけcheck1とcheck2の中間にして欲しい。
(ほんのわずかに上げる感じです)
完成した【狐火】M1
【狐火】M2_Master_check2を聴いた後の最後の修正リクエスト
・M1のOKテイクに合わせる感じで、ほんの少しだけ高音域を上げたい。
完成した【狐火】M2

【いろごろも】のマスタリングは、ステムミックスの素材で行いました
HagiがMixした詩吟の音源
【狐火】と同じような方向で作業して頂くように依頼しました。
【狐火】と異なる点は、ステムミックスでの作業です!
【いろごろも】のM1は、下の5パートにステム化しました。
- ボーカル
- 尺八
- ストリングス
- 打楽器(Big Drum)
- Sub Mix(その他全てのトラック)
最初にM1の2パターンが送られてきました
【いろごろも】M1_check1の2つのバージョンを聴いて下記のように感じました。
- ver1は、高音域が、伸びている。
- ver2は、低音域(ボトムエンド)が、伸びている。
- ボーカルは、ver2の方が半歩前に出た感じで存在感(音圧)があると感じた。
- 尺八も、ver2の方が中低音域の音圧があって力強く聞こえた。
ver2 の方が良いと感じたが、ver1の方が少し音圧が控えめで全体的に聞きやすく、詩吟の作品には、ver1の方が良いと思いました。
【いろごろも】のM2やM8など、ビートが鳴る曲は、ver2の方向に仕上げた方がカッコいいと思いました。
上記の感想を伝えたところ、北畑氏からのメッセージ
〜〜〜〜〜
手法、方向性を探るのにあえて少し差を出しました。
すごく興味深い感想です。合わせ技でも大丈夫です。
例えば、 声の感じはVer.1とかでもいいかもです。
〜〜〜〜〜
(この日は、少し電話でお話して下記の修正リクエストをお伝えしました)
- リズムは、ver2の感じだけど、ボーカルは、ver1の感じにしたい。
- アルバム全体の方向としては、ver2の方で作業を進めて欲しい。
- 詩吟の作品なので、音圧はあまり必要ではない。
(音圧が高いと違和感が出ると感じたから)
完成した【いろごろも】M1
Album【いろごろも】には、いろいろなタイプの曲が収録されています。
M1しか例に取り上げませんでしたが、ステムミックスからの作業でしたので細かく注文した曲もありました。
例)M5の場合、
尺八トラックの1分25秒あたりで、1kHz付近がピーキーに感じます。
尺八トラックのボリュームをほんの少し下げるか、1kHz前後を少し下げたいと感じました。ボリューム全体を下げた場合、前半のウェットな尺八が埋もれ気味になると思いますが、その部分の尺八は、埋もれてもOKです。
例)M10の場合、
Percの低音域を、ほんの少し上げたいが、ボリューム感はOKで重低音でボトム感をほんの少しだけ上げて欲しい。
本来ならMixで作業しておかないといけないような事まで丁寧に作業して下さいました。
感謝です☆

最近では、アナログ機材をシミュレートしたプラグインも多く、スタジオからどんどんアナログ機材がなくなっていっているので、アナログ機材が並んでいると、それだけでアガリマス!
最後に、
音楽を作った(Mixした)自分にとっては、元の音源とマスタリングして頂いた音源では大きな差がありますが、一般の方が聴いても、わずかな音質の差にピンとこないかもしれません。(正確に再生できるスピーカーやヘッドフォンでないと聞き分けられないかもしれません)
ただ、微妙な所にまでこだわりを持って音楽が創られているという事を紹介できたら良いと思って記事にしました。
マスタリングだけではなく、録音もミックスも、なんでも相談できる(?)大阪のAlchemy Studio では、ピアノやドラムの録音もOKです!

